これから読書を始めたい人向け『大人のための読書の全技術』

大人のための読書の全技術

タイトル:大人のための読書の全技術

著者:齋藤 孝

発行年:2014年7月31日

発行所:株式会社KADOKAWA

 

この本は分かりやすい文章と様々な例えで、読書がどう重要で役に立つかを教えてくれます。また著者の齋藤氏が実際に実践している読書法が紹介されており、これから読書を始めてみようと思っている高校生や大学生が読むにはちょうど良い本ではないかと思います。

一方、タイトルの「読書の全技術」から、僕は読書の技術について書かれている事を期待して読んでみたわけですが、そういった期待に対しては特に目新しい内容がなく、少し物足りなく感じました。

 

物足りなく感じてしまった理由は、改めて「はじめに」を見直して理解できた気がします。はじめにには次のように書かれています。

急激に変化していく現代社会では、もはや学生時代に身につけた知識や情報だけでは、対処しきれなくなっているのです。

(中略)

私は、正しい読書術を身につけて、「誰よりもたくさんの本を、誰よりも精密に読み込み、すぐに仕事に応用できるようになる」ことこそが、ただ一つの解決策だと考えています。

つまり、この本の目指すところは「仕事に役立てるための読書の技術を伝える」という事だったようです。このため、読書の技術と合わせて、なぜ読書が仕事に役立つのかの説明もされているように感じました。

 

そんなわけで、読書が何の役に立つの?という疑問を持っている方には読みやすく良い本だと思いますが、純粋に技術を知りたいと思って読むと肩透かしを食らうかもしれません。

 

最後に一点だけ、とても気に入った例えがあったので紹介しておきます。

森のような脳内図書館を構築すれば、私たちの心はより豊かなものになっていく

他の読書本でも言われている事ですが、本は一冊だけ読めば良いというものではなく、例え同じ内容の本でも2冊、3冊と読む事で、自分の中で補完や理解、解釈が生まれ、そういったものが、その人のユニークな考えとなり血肉になっていくのだと思います。

だからこそ多読や乱読が勧められるわけですが、この森のような脳内図書館という表現は的確に事実とイメージを伝える非常に素晴らしい表現だと感じました。

 

 

補足: 知らずに単行本版を買ってしまったけど既に文庫版が出ているようなので今から買うならこちらがおすすめ。

 

 単行本版はこちら

大人のための読書の全技術

大人のための読書の全技術

 

 

 

濃厚な読書指南書『読書の技法』

読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門

タイトル:読書の技法

著者:佐藤 優

発行日:2012年8月9日

発行所:東洋経済新報社

僕らが毎日やっている最強の読み方―新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意

こちらの本でも紹介されていた一冊(この本に関する記事は以下)
http://honyomiminarai.net/2017/01/06/20170106185452/

 

誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門

なんて謳っていまずが、誰でもできるような気軽な方法は全然書いてませんw

でも、誰でもこれを実践すれば本物になれるかもしれない、そう思えるくらいには濃厚な方法論が書かれている良書だと思います。

この本で最も気に入ったのは、その分野の基礎知識がないと速読などできないと明言していること。

まずはその分野の基礎知識をしっかり身につける必要があることを強調しています。そうした前提に立った上で、熟読の方法や速読の方法を事細かに教えてくれています。

第3章では速読についても述べられていますが、前章では基本書は熟読すべきで、時間がかかる本もあるし、それらをどう読みこなしていけば良いかについても述べられています。

なかなか速読できるようにならないという悩みが少なからずあったので、速度をするためにむしろ熟読が必要だと理解できたのは大きかったです。

さらに第5章では、基礎の重要性を強調し、高校の教科書や学習参考書でまずは「正しい知識」を身につけるべきだと述べています。歴史や政治経済など各科目毎に教科書の記述が現実の問題やそれらを扱う本の基礎になっているのだという事を様々な事例で説明しています。この部分がまた濃いw

特に国語は、なんとなく分かった気になっているが、論理的思考力を鍛えビジネスにも直結する重要な科目という事でとても納得したので、紹介されていた出口汪 現代文講義の実況中継(1) (実況中継シリーズ)も買ってみました。

一点だけ不満があるとすれば、佐藤氏の専門の問題で紹介されるネタが完全に文系よりでさっぱり分からないという事。数学の話や金融工学なども出てきてすごいなと思いつつ、エンジニアの身としては 技術書を具体的にどう読むのかというのは気になるところです。

全編を通して濃厚でマッチョな読み方を指南してくれており、とても誰でも実践できるとは思わないけど、佐藤氏のように読めるようになるには、やはり相当の努力が必要ということだろう。がんばろ。

読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門

読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門

僕らが毎日やっている最強の読み方 −新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意−

僕らが毎日やっている最強の読み方―新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意

僕らが毎日やっている最強の読み方―新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意

この本から学んだこと

  • 知識を積み上げていくためには確かな基礎をつくる事が最も重要だということ
  • 新聞で情報をキャッチアップし雑誌で興味を広げ、書籍で基礎知識を身につけるというそれぞれの使い方

本の紹介

書籍情報

  • タイトル: 僕らが毎日やっている最強の読み方 −新聞・雑誌・ネット・書籍から「知識と教養」を身につける70の極意−
  • 著者: 池上 彰/佐藤 優
  • 発行: 2016年12月29日
  • 発行所: 東洋経済新報社

概要

帯に「2人の最新全スキルが1冊でわかる」とあるように、佐藤さんと池上さんが対談形式で新聞や書籍などを通してどうやって情報を取得し知識を身につけているかを紹介しているHowTo本です。70の極意ということで巻末にもポイントが70+αでまとめられています。

構成、全体像

本の構成は以下のようになっています。

  • 序章 僕らが毎日やっている「読み方を公開」
  • 第1章 僕らの新聞の読み方
  • 第2章 僕らの雑誌の読み方
  • 第3章 僕らのネットの使い方
  • 第4章 僕らの書籍の読み方
  • 第5章 僕らの教科書・学習参考書の使い方

それぞれのメディアの具体的な読み方を通して、それぞれのメディアの特徴と活かし方、根底にある2人の考え方が知れるような構成になっています。

この本を読もうと思ったきっかけ、読んだ目的

きっかけはあまり覚えてないですが、おそらく池上さんが出演していたテレビで紹介されていたんじゃないかと思います(年末年始によく見かけたし)。

最近の悩みとして幅広く情報収集をしたい、知識をつけたいと思って本を買ったり新聞を購読したりするものの、いまいち効率が良くない、なんとなく成果が上がっていないという思いがありました。
そんな悩みもあってちょうどどんぴしゃなテーマだったのがこの本でした。

印象に残っている内容

全体を通して非常に多くのことを得られましたが、特に印象に残っている内容を挙げてみます。

新聞は最低2紙に目を通さないと、ニュースの一部しか見えてこない

これはまったく知らなかったのですが、昔は各社記事の内容に大きな違いはなかったのが、特にここ数年はニュースによっては取り上げ方や記事になるかならないかというレベルで各社大きく内容が変わることもあるそうです。このため、1紙だけを読んでいた場合にニュースそのものを知らないということが起きたり、知らず知らずのうちに読んでいる新聞によって知識や理解にバイアスがかかってしまうといったことが起きうるということが指摘されていました。なかなか恐ろしいことですね。また、新聞に関しては各社の特徴や読者層についても書かれていて非常に面白かったです。

「勝手に分析されて情報が偏っていく」というネット独自の危険性

最近のニュースサイトやアプリなどではユーザーの読んだ記事や見たページに合わせて記事のレコメンドを行うものが多くなっています。そうすると自分の意見に近い記事がより多く目に入ることになり、皆そう思っているんだというように感じたり視野が狭くなってしまう可能性があるということが指摘されていました。自分自身の業務内容がこの指摘とは無関係ではないため、強く意識しておく必要があるなと感じています。

効率的な読書には「本を仕分ける」ことが重要

佐藤さんが本を仕分けるという表現したのに対して、池上さんは「その本との向き合い方を決めておく」と表現していましたが、要は効率的に本を読んでいくためには、全部きっちり読んでいたらそれは効率が悪いよねということです。しっかり読むべき基本となる本は何度も読んだり熟読すべきだし、そうではない本は速読をすれば良い。重要なのはそれを見極めてまず仕分けること。ただどうやってそれを見極められるかというと経験値が必要なように感じました。当たり前ですが一朝一夕で身につくものではないので、多くの本との接触点はもっと作りたいなと思いました。

読書には「ネット断ち」と「酒断ち」が重要

特に酒断ちについては実感していたところなので、ですよねーという感じです。今年の目標にします。

世の中を「理解する」には書籍がベース。いい基本書を熟読し、基礎知識を身につける

なんとなく本を読もうと思っていたところに一本筋を通してもらった感じがします。新聞は世の中を「知る」ために必要だが、理解するためには書籍が必要。特に基本書で基礎を身につけることが重要。非常に納得感があります。

まとめ

全体を通して非常にためになる内容が満載でした。良書やサイトも多数紹介されていたので何度も読み返したい濃い本だと思います。
余談ですが対談本ってなんとなく「そうだよね、わかるわかる」みたいな感じで内容が薄いという偏見があったんですが、完全に認識が変わりました。

満足度: ★★★★★