LINEを生んだ森川氏の考え方に触れられる『ダントツにすごい人になる』

ダントツにすごい人になる  日本が生き残るための人材論

タイトル:ダントツにすごい人になる

著者:森川 亮

発行日:2016年12月10日

発行所:祥伝社

 

 いつの間にかほとんどの日本人が使うようになったLINE。

そのLINEを生んだ森川亮氏の本という事で興味を惹かれました。

イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」の著者でもあるヤフーの安宅氏らとの対談も気になったので購入しました。

 

実は今まで、顔は知っていたもののインタビューなども読んだ事がなく、どういった考え方をする方なのかはあまり知りませんでした。 

読後の感想を一言で言えば、やっぱりすごい人だったんだなでしたw

またなんとなく穏やかなイメージがあったのですが、ものすごく熱い方だというのもよく分かりました。

 

本書は人材に関する本なので、どういう人がすごいか、どういう人を目指すべきかという話が中心になっています。また会社や組織との向き合い方についてもよく言及されていました。いくつか興味深かったトピックを拾っていきます。

思考硬化度

変化に強くある事の重要性を説く中で思考硬化度というものを定義していました。その中の思考硬化度0、1がこちらです。

思考硬化度0: 常に今の社会で求められていることを考えている。そこから自分のやるべきことを導き、会社でも積極的に提案している。たとえ会社が受け入れてくれなくても、自らそれができるような場をつくりだしたり、起業の準備を進めたりしている。

思考硬化度1: 自分の興味のあること、やりたいことを常に考え、積極的に会社に提案している。ただ、会社が受け入れてくれないことも多く、悶々としている。

思考硬化度は3まで定義されていますが、もちろんこの中でダントツにすごい人は思考硬化度が0です。思考硬化度2,3は最初は1だったかもしれないが、段々と疲れてしまって時には自分自身が壁になってしまう人とされています。

これを見たときにハッとしたのが、自分はまだ1ではあるかもしれないが、0ではないなという事でした。会社に受け入れられなかった時に動けるかどうかが圧倒的な違いなんだなという事を痛感しました。

組織の中で生き残ることに意味はない

上司や組織のトップが何を言おうと、正しい判断をし、正しい行動をとる。そうすれば組織が間違った方向に進むのを止められます。

響いた一文です。こうありたい、こうあるべきだと思います。

しかし、森川氏もこの後、大企業ではこれが必ず求められるわけではなく、こういった行動の結果評価が下がる場合もあるので、そういった場合はその組織から離れるのが賢明だと述べています。

ダントツにすごい人」の条件

ダントツにすごい人の条件として以下の3つが挙げられています。

1. 新しい価値を生み、結果を出しつづける

2. 常に成長することをやめない

3. 「偉い人」にはならない

 特に面白いのは3の偉い人にはならないという点です。

結果を出せば、地位も上がっていくが、どんな地位であっても自分がすべきことをやる。時にはその地位を捨てて価値を生み出すために愚直にやり続けるのがダントツにすごい人だと述べています。

それが常に成長することをやめないという事であり、森川氏自身がLINEを辞めて実践し続けている事でもあると思いました。

「失敗してもいいから挑戦せよ」は大間違い

人生での最大の失敗は、失敗を恐れて何も挑戦しないことだが、失敗してもいいから挑戦するのは間違っていると述べられています。

これは失敗すると分かっているならやるべきでないし、分からないなら、あらゆる仮説を立てて備えておくべきという事です。そうすれば必ず結果から仮説を検証し、次に活かす事ができる。次に活かすことができればそれは失敗にはならないという事です。

また、しっかりと仮説検証をして決断を下す事の重要性も説いています。

変えるべきであれば変えるし、変えるべきでなければ変えない。結論はそのどちらか一つであり、「変えるべきだけれども、変えない」はあり得ません。

おそらく「失敗してもいいから挑戦せよ」で挑戦すると、多くの場合、変えるべきという明確な決断を下せるほど材料が得られず、決断が先延ばしになるのではないでしょうか。そうではなく、「考え抜いて、失敗しないはずだという仮説のもと挑戦する」ことが重要なのだと思います。そしてそれがLINEの圧倒的な成長のスピードにも繋がっていたのではと思います。

 

 

本書を通じて森川氏の熱さととてつもなく冷静で論理的な考え方に触れる事ができ、とても刺激になりました。また自分の置かれている状況についても見つめ直す事ができ、期待以上に得るものがありました。

 

ダントツにすごい人になる  日本が生き残るための人材論

ダントツにすごい人になる 日本が生き残るための人材論

 

 

相手を思ってやってみる『「気遣い」のキホン』

仕事も人間関係もうまくいく 「気遣い」のキホン

 

仕事も人間関係もうまくいく 「気遣い」のキホン

 

 

こちらもKindle Unlimitedで見つけた本。

一時期ラインナップが問題になりましたが、月額980円で読み放題なら十分すぎますね。

 

本題ですが、僕は「気遣い」というのがとても苦手です。

いつでも考えすぎてしまう。その結果何もできない。

そういう事が良くあり、しばしば悩んでしまいます。

 

この本は、そういった悩みを解消するためのヒントになるかなと軽い気持ちで読み始めました。しかし、ヒントどころか答えが書いてあって一気に読みきってしまいました。

 

著者の三上氏いわく、気遣いができないのは自信がないから、そして自信がないのは、実は自分のことばかり考えているから。

それは例えば、

「これをして相手が不快に思ったらどうしよう」

「気に障ったら嫌だな」

などと考えるのは結局のところ、自分が相手にどう思われるかしか考えていないということです。

 

だから、大事なのは自分が相手にどう思われるかではなく、相手がどうしたいかを考えて行動すること。

そうすればあまり相手からどう思われるかは気にならないし、仮に心配が的中してしまっても、相手がどうしたいかを考えて行動した結果なので納得のしようがある。

この考えは実践できるかどうかは、それこそ自信がないですが、ぜひとも実践しようと思わせてくれるものでした。

 

この本に書いた一番大切なこと。それは「相手のためになると思うこと」を「自信がなくてもやってみる」ことです。

 

肝に銘じたいと思います。

 

全体を通しては、著者の体験談を通して、色々なシーンでこの考え方を実践するヒントとなっているだけでなく、CAさんはじめ接客業の方々の気遣いの素晴らしさも垣間見れるような内容となっています。

 

まったく話が変わりますが、最近学んでいるマインドフルネスを鍛えるためのトレーニングのひとつに、すれ違った人の幸せを願うといったものがあります。このトレーニングを重ねていけば、相手のためになることが少しでも見えてくるようになるでしょうか。

 

仕事も人間関係もうまくいく 「気遣い」のキホン

仕事も人間関係もうまくいく 「気遣い」のキホン

 

 

シンプルイズベスト「わかりやすい文章を書く全技術100」

「わかりやすい」文章を書く全技術100

「わかりやすい」文章を書く全技術100

ブログを書き始めてみたものの、どうにも上手く文章が書けない。

そんな時Kindle Unlimitedで見つけたのでざっと読んでみました。

帯に

これ一冊で、文章技術を完全網羅!

とある通り、書かれている技術自体は多いです。

ふむふむとは思いつつ、ひとつひとつは何度も読まないと覚えられないと思います。

ただ、ひとつひとつの技術が独立した項になっており、かつ以下のようなシンプルな構造になっているため、理解がしやすかったです。

  • 技術について
  • 悪い例
  • 修正した例

定期的に目を通すようにすると、気づきが得られそうな良書だと思います。

「わかりやすい」文章を書く全技術100

「わかりやすい」文章を書く全技術100

いちばんやさしいグロースハックの教本

いちばんやさしいグロースハックの教本 人気講師が教える急成長マーケティング戦略 (「いちばんやさしい教本」シリーズ)

いちばんやさしいグロースハックの教本 人気講師が教える急成長マーケティング戦略 (「いちばんやさしい教本」シリーズ)

この本から学んだこと

グロースハックとは何か。データで判断してサービスを改善するとはどういうことか

書籍情報

  • タイトル: いちばんやさしいグロースハックの教本 −人気講師が教える急成長マーケティング戦略−
  • 著者: 金山 裕樹、梶谷 健人
  • 発効日: 2016年1月21日
  • 発行所: 株式会社インプレス

この本の構成、全体像

女性向けファッションサービスiQONを運営する VASILYのCEO金山さんとグロースハッカーの梶谷さんによるグロースハックについての本格的な実践書。グロースハックとは何かというところから、現場で実践している「ARRRA」フレームワークを軸にサービスをいかに成長させるかが書かれています。章構成は以下の通り。

  • Chapter1 グロースハックを理解しよう
  • Chapter2 基本のフレームワークを理解しよう
  • Chapter3 まずは価値提供から手を付けよう
  • Chapter4 グロースサイクルで施策を実行しよう
  • Chapter5 継続率を着実に高めよう
  • Chapter6 紹介をハックして成長を加速させよう
  • Chapter7 レベニューを理解して収益化しよう
  • Chapter8 ユーザー獲得作でさらに成長させよう

この本を読もうと思ったきっかけ、読んだ目的

ずっと気になっていたのですが、先日Kindle Unlimitedで発見してすぐにリストに確保しました。グロースハックや「AARRR」モデルについては一応知ってはいるもののその本質的なところは掴めていないという感覚があったので、しっかり理解したいと思い読み始めました。

印象に残っている内容

グロースハックとは

グロースハックという単語はよく聞くようになったものの、その実態はよく分かっていませんでした。マーケティングとの違いもいまいち分からず、とにかく開発に近いところも含めてサービスを成長させるためになんでもやること・人なんだという曖昧な認識でした。この本ではグロースハックを以下のように定義しています。

製品の中に自発的に成長する仕組みを組み込んで、その結果をデータで判断し改善していくこと

この定義は僕にとって、とても納得のいくものでした。

その理由は、まずは「データで判断し改善していく」という点です。納得のいかない、あるいは理解できない施策の開発をするのは辛いことです。時にはなぜその施策を実施する必要があるのかチームで意見が合わない事もあります。しかし、データで示されれば納得感を持って開発を進めることができるでしょう。開発のパフォーマンスも上がるはずです。

そして、「自発的に成長する仕組みを組み込む」という点です。何か施策を実施すれば成長するのはある意味当然です。しかし、昨今の周囲の環境や技術の進歩のスピードの中で、成長させながらきちんと運用していくということは難しいことです。このため、自発的に成長する仕組みを組み込み、それを改善していくというのはとても良い方法だと思いました。

ARRRAモデル

ARRRA(アーラ)モデルは有名なAARRR(アー)モデルを発展させたモデルとして紹介されています。
AARRRモデルはそれぞれ、Acquisition(ユーザー獲得)、Activation(ユーザー活性化)、Retention(継続)、Referral(紹介)、Revenue(収益化)の頭文字になっています。対してARRRAモデルは、Activation(ユーザー活性化)、Retention(継続)、Referral(紹介)、Revenue(収益化)、Acquisition(ユーザー獲得)となっています。

違いはその順番です。AARRRモデルの並びは実際に成長するための施策を実施していく順番になっています。またActivationはユーザー活性化にとどまらず「ユーザー体験の最大化」に拡張しているということです。このARRRAモデルがとても素晴らしいと感じました。なぜなら成長するためには、サービスの規模に応じてこのARRRAのサイクルを何度もまわしていく必要があるからです。なんとなく覚えづらかったAARRRモデルがサービスを絶え間なく成長させていくモデルに発展していると感じました。

その他

テレビCMを実施する時に、期間や地域をうまく調整し、ユーザーの地域毎の登録数からA/Bテストを行い、費用対効果を上げたという事例が紹介されており、「データで判断し改善していく」とはこういうことかというのを見た気がしました。

まとめ

全体を通して印象的だったのは、成長するためには本質的には何が必要かを考え、必要であれば既存のやり方やモデルを拡張して利用していることです。そしてデータを見ながら改善していくということが豊富な事例とともに説明されていて、とても濃い一冊でした。

満足度: ★★★★★

「学力」の経済学

「学力」の経済学

「学力」の経済学

この本から学んだこと

教育政策を科学的根拠をもとに議論し決定していくことの重要性と、日本の危機的な現状について

書籍情報

この本の構成、全体像

「教育経済学」を専門とする著者の中室さんが、よく聞かれる質問について科学的根拠を示しながらわかりやすく回答、解説していく構成になっています。また同時に科学的根拠を元に政策を決めていくことの重要性、日本の現状の課題についても述べられています。全体の構成は以下のようになっています。

  • 第1章 他人の”成功体験”はわが子にも活かせるのか? −データは個人の経験に勝る−
  • 第2章 子どもを”ご褒美”で釣ってはいけないのか? −科学的根拠<エビデンス>に基づく子育て−
  • 第3章 ”勉強”は本当にそんなに大切なのか? −人生の成功に重要な非認知能力−
  • 第4章 ”少人数学級”には効果があるのか? −科学的根拠<エビデンス>なき日本の教育政策−
  • 第5章 ”いい先生”とはどんな先生なのか? −日本の教育にかけている教員の「質」という概念−
  • 補論: なぜ、教育に実験が必要なのか

この本を読もうと思ったきっかけ、読んだ目的

帯にも書かれていますが、たまたま観ていた「林先生が驚く初耳学!」という番組で紹介されていたのがきっかけです。2人の子供の親である身としてはもちろん興味のあるテーマですが、林先生が大絶賛していたので興味を惹かれました。

特に日本人全員が読むべきといった主旨のことも言っていた気がしてその点が気になっていました。

印象に残っている内容

それぞれの章の疑問に対する回答がまず面白くためになる内容になっています。例えば第2章のご褒美で釣ってはいけないかという疑問について、最終的には「インプットに対して近い将来に報酬を与える」ような設計をするのが良いと具体的に示してくれています。また、全体を通して「因果関係と相関関係の違い」、「収益率」など基本的な知識やなぜそう考えれば良いかということについても丁寧に分かりやすく説明されており全く知識がない人でも読みやすいのではないかと思います。

そしてこの本で何より主張したかったであろう、科学的根拠をもとに教育政策を決めることの重要性、そして日本では海外で既に効率が悪いと示されている政策を根拠なく実施しようとしている現状の課題、さらには実験を実施できない、統計データにアクセスすらできないという危機的状況について述べられていた点が非常に印象に残っています。

まとめ

それぞれの疑問への回答を通して、こうやって効果のある方法を試行錯誤していけば少しずつでも良くすることができると感じた後、現状の危機的状況を知り衝撃を受けました。この問題の大きな障害になっているのは過剰な平等、プライバシーへの配慮であろう点を考えると、まずは現状について多くの人が正しい認識を持つことが必要だと感じました。そう考えるとまさにすべての人が読むべき本だと思います。

もちろん単純に教育方針を考える際にも参考になる良書だと思いますよ。

満足度: ★★★★★

「学力」の経済学

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