「学力」の経済学

「学力」の経済学

「学力」の経済学

この本から学んだこと

教育政策を科学的根拠をもとに議論し決定していくことの重要性と、日本の危機的な現状について

書籍情報

この本の構成、全体像

「教育経済学」を専門とする著者の中室さんが、よく聞かれる質問について科学的根拠を示しながらわかりやすく回答、解説していく構成になっています。また同時に科学的根拠を元に政策を決めていくことの重要性、日本の現状の課題についても述べられています。全体の構成は以下のようになっています。

  • 第1章 他人の”成功体験”はわが子にも活かせるのか? −データは個人の経験に勝る−
  • 第2章 子どもを”ご褒美”で釣ってはいけないのか? −科学的根拠<エビデンス>に基づく子育て−
  • 第3章 ”勉強”は本当にそんなに大切なのか? −人生の成功に重要な非認知能力−
  • 第4章 ”少人数学級”には効果があるのか? −科学的根拠<エビデンス>なき日本の教育政策−
  • 第5章 ”いい先生”とはどんな先生なのか? −日本の教育にかけている教員の「質」という概念−
  • 補論: なぜ、教育に実験が必要なのか

この本を読もうと思ったきっかけ、読んだ目的

帯にも書かれていますが、たまたま観ていた「林先生が驚く初耳学!」という番組で紹介されていたのがきっかけです。2人の子供の親である身としてはもちろん興味のあるテーマですが、林先生が大絶賛していたので興味を惹かれました。

特に日本人全員が読むべきといった主旨のことも言っていた気がしてその点が気になっていました。

印象に残っている内容

それぞれの章の疑問に対する回答がまず面白くためになる内容になっています。例えば第2章のご褒美で釣ってはいけないかという疑問について、最終的には「インプットに対して近い将来に報酬を与える」ような設計をするのが良いと具体的に示してくれています。また、全体を通して「因果関係と相関関係の違い」、「収益率」など基本的な知識やなぜそう考えれば良いかということについても丁寧に分かりやすく説明されており全く知識がない人でも読みやすいのではないかと思います。

そしてこの本で何より主張したかったであろう、科学的根拠をもとに教育政策を決めることの重要性、そして日本では海外で既に効率が悪いと示されている政策を根拠なく実施しようとしている現状の課題、さらには実験を実施できない、統計データにアクセスすらできないという危機的状況について述べられていた点が非常に印象に残っています。

まとめ

それぞれの疑問への回答を通して、こうやって効果のある方法を試行錯誤していけば少しずつでも良くすることができると感じた後、現状の危機的状況を知り衝撃を受けました。この問題の大きな障害になっているのは過剰な平等、プライバシーへの配慮であろう点を考えると、まずは現状について多くの人が正しい認識を持つことが必要だと感じました。そう考えるとまさにすべての人が読むべき本だと思います。

もちろん単純に教育方針を考える際にも参考になる良書だと思いますよ。

満足度: ★★★★★

「学力」の経済学

「学力」の経済学

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です